2020/02/12

ネットを含む広告会社系の半期、四半期決算

ども、冒頭部分を書き忘れた波乗りペンギンです。
世界経済や日本経済が一部凹んでいる気がしている中、新型コロナウィルスの影響が怖い今日この頃。
おそらく、今後の業績は二極化が顕著になるだろう。ネットだから成長するなんて、誰も思ってないと思うが・・・。

■サイバーエージェント 2020年1Q決算発表 決算説明会資料 (PDF 3995KB)

資料はミドルページにリンクしているので、そこからリンクをたどってほしい。
好調ということで、売上高: 1,156億円 、営業利益: 77億円。
AbemaTVの赤字を50億も抱えての業績結果なので、恐ろしいものがある。
P6の販管費の推移、P7の社員数を見ると、社員を減らして人件費を下げている。
また、業績見通しも幅がある。

今年も先が見通せない不安定感はヒシヒシと感じる。
・コロナウィルスの流行
・5G日本でも開始へ
・オリンピック、パラリンピックの東京開催
・自然災害(大雨、強風、地震など)
・紛争(中東)
・貿易戦争(米国vs中国)
とか、直接か間接かの違いはあるけど、日本経済へのダメージはある。
5Gがダメージを与えるってのは、通信会社の設備投資が増えて、新サービスなどで市場拡大する前提で動くからだ。
投資した分の回収、市場の成長速度、通信料金や端末更新の利用者負担はマイナス要素だ。大容量、高速通信とかスペックは凄いけど、それを生かすコンテンツ提供側の開発費は高騰する。低遅延とかサーバ処理能力を物理的にも上げなきゃいけない。
そして、5G対応端末の普及速度は3G、4Gと比較しても遅くなる。
だって、0円端末とか規制によってなくなったので、利用者側の初期投資が必要になったからだ。

■オプトHD(デジタルHD)  2019年12月期第4四半期決算説明会資料

PDFは直リンクです。
なんと、商号変更とのこと。(P23)
ネット専業広告代理店から脱却を図る、ということらしい。そこまでは言ってないけど・・・。

今四半期は、売上高 273.8億円 経常利益 32.06億円
景気の影響を受けやすい広告業で、巨人である電通HDや単独二位の博報堂HDという壁がある以上、「シフト」しないと売上というか規模が出せなくなったのだろう。(P24)
個人情報保護からのクッキー規制など、アドネットワークや周辺市場がダメージを受けると観測されているのも、大きいだろう。

うーん、精度を上げたターゲティング広告で数字的には説明しやすくなっていたが、広告主はCTRやCVRの数値改善は、上限なしで(比例して)企業の利益になってないことに気が付いた節もある。
デジタルコンテンツ系なら、規模の拡大はサーバなど増設することでリアルに比べれば楽だけど、物が絡むリアルとか時間もコストも掛かるわけだから、集客だけ成功してもね・・・。

■セプテーニ・ホールディングス 2020年9月期 第1四半期決算説明会資料

PDF直リンク。
収益 43.62億円 営業利益 5.72億円
電通の資本を入れて、ひとまず安心といったところか。
ネット専業代理店の流れは変わらずとみた。なんか、昔のオプトを見ているような・・・。

収益の9割近くが広告(デジマとなっている)だが、電通グループ内での取扱領域(P53,54)が今一つ見えない。
デジタルマーケティングのビジネスモデル(P58)と、新規事業の取り組み(P30)が、なんか繋がらない。
見るべきところもあまりないかな。

■博報堂DYHD 2020年3月期 第3四半期決算説明会資料

PDF直リンク。
売上高:1兆682億円、前年同期比+1.3%
営業利益:376億円、前年同期比-23.5%
4マスの減じた分をネットが余裕でカバーした感じだが、伸びどまりだろう。
電通も下方修正を発表してたし。

数字しかないので、2020年3月期 上期 決算説明会資料(中期経営計画の進捗状況)<解説つき>を見る。

P5「次世代型デジタルエージェンシー」にアイレップが好調とのこと。
グループ全体のデジタル化は、グループ内横断組織を作ったり、いろいろ手を打っている印象がある。うまく行ったとみるべきだろう。
あとは、どう組織というか会社を統合していくか、うまく混ざるのか?
HDYデジタルとDACの経営統合は、業務内容も人もデジタル系だから大丈夫だけど、リアル系は厳しいと思われる。

カルタホールディングス 2019年12月期 通期決算説明資料

PDF直リンク。
売上高 261.58億円 営業利益 38.39億円
増収増益ということらしい。
どこも販管費、人件費が重くなっている。
良いことだ。

P13の事業概要を見ながら、P6セグメント業績を見る。
コンシューマ事業の利益が少ない。
レップ業が半分を占めているので、アドネットワークが減衰しても、枠販売に希望が残りそうだ。その場合は、コンシューマ事業は対メディアで足枷になるかも。

あとは、具体的に飛躍する事業ってなんだ?という部分。
誰も見えないから未来は楽しいけど、テレビやOOHって大手広告会社が利権を持っている世界だし、ナショナルクライアントが相手になるから、売上が伸びると考えているのかな。

■アドウェイズ 2020年3月期 第3四半期決算説明会

PDF直リンク。
売上高 91.25億円   営業利益 1.03億円
博報堂DYMPと資本提携した効果なのか、持ち直した。

気になったのは、P7「法令遵守に伴う広告出稿の厳格化により健康食品及び美容関連の案件が減少」。どんどん厳しくなると思うけど、HDYMPから良質な案件が増えれば、大丈夫のはず。
そんなクライアント向けにP23で広告手法を紹介している。
それを生かせるクリエイティブが作れるかどうか、目新しいだけだと続かないからね。(遠い目)

■電通グループ 決算説明資料

PDF直リンク。
バレンタインデーに決算説明会、資料は公開済み。
2019.01-12 売上高 5兆1,468.02億円 前年比 -3.9%
利益 -808.93億円
赤字です。
P5の地域別を見ると、アジア地域のマイナスが大きい。

P14以降は今後の話だが、DXに軸を置くようだ。
電通という規模と影響力を考えると、クライアントだけでなくメディアのDXも入るだろう。

P30のオペレーティングマージンだが、低下が止まらない。
ココだけ見ると、それしかわからないが、P39国内デジタル領域の構成比をみると、構成比が増えると利益が低下する傾向がありそうだ。
単純に、媒体利益率(手数料率)の違いもあるが、海外だとフィー(代理店報酬)制度だったりして、単純な話でもない。

■まとめ

と、最大手の電通が赤字。
米中貿易戦争の影響だけでも厳しかったのに、新型コロナウィルスで中国経済はズタズタだし、サプライチェーンでつながっている以上、日本もダメージを受けてしまう。
真っ先に削られるのは、広告費だしね。

具体的に思いつく懸念は
・製品不足によるメーカーのキャンペーン中止、長期化すると広告費どころではない。
・感染抑止による観光業の広告露出低下、インバウンド系は広告主がヤバい。
・交通や運輸も広告露出を見合わせたり、キャンペーン中止。
・イベントの中止、日本は五輪があるので大型イベントは延期しても会場確保不可。
・外出抑制による来店者の激減、飲食や小売りは死活問題。
・ネットのデマで市場が混乱。(効果のある食材とか、買い占めや転売)
あたりかな。

どうか、早く終息しますように。

以上

2019/12/06

radiko、広告の実証実験中

スマホアプリとして、「ラジオ受信機」を知らない世代に、唯一ラジオを説明できる存在であるradiko。
未だ、広告が実証実験中で、当面継続されるようだ。

来るか、音声広告の時代 radikoオーディオアドが持つデジタルならではの価値
https://markezine.jp/article/detail/32449

ちなみに、radikoは145万UU/日ということで、ラジオ受信機の聴取者と比較すれば若年層が多いそうだ。
媒体資料がないので、詳細はリンク先の情報に頼るしかない。

一方で、ここ数年はユーザー数の伸びどまりが指摘されているとか。
テレビと比較すると、情報発信力はネットで感じられない。
テレビのコメントはネットニュースに上げられるが、ラジオとなると芸能人の結婚発表ぐらいじゃないかな。いや、それすらも自分のブログやtwitterで発表するケースも増えている。マスコミにFAXという伝統的な告知も健在ではあるが。

ラジオは「ながら視聴」がメディア特性である。(あった。)
運転しながら、勉強しながら、仕事しながら、家事をしながら、etc.
スマホでもスピーカーモードで聞けば、可能ではある。
でも、想像できない。
ラジオそのものが生活からなくなってしまった時期が、致命的だったのではないだろうか。人々はラジカセからウォークマンに、そしてiPodにデジタルシフトした段階で、音楽とは密接につながった。
でも、ラジオではなかった。ラジオから音楽が分離されてしまったともいえよう。
テレビでは歌だけでも、アイドルの声を聴くのはラジオがあったのが昔。
今は、アイドルの話を聞くのであれば、ネット動画もあるしネットライブを見ることも可能だ。
かといって、動画や画像を扱うというのはテレビになるだけである。(見えるラジオとか失敗したしね)

聞くという意味では、スマートスピーカーと相性がいいはずだけど、前述の通りで、ラジオを聴こうというモチベーションがユーザにない限り、難しいだろう。
個人として、スマートスピーカーを3種類持っているが、ラジオを聴こうとは思わない。
もちろん、radikoのスキルをインストールして使ってはみたものの、メディア機器が増えたいまは、どうしても優先順位が上がらない。
今のスマホに勝るとも劣らないくらい、ラジオを聴取していた世代なんだが。

結局コンテンツ次第というオチはあるが、聞きたいと思わせる魅力に乏しいわけで、習慣的な利用というメリットは、選択肢が限られていないと成立しないのだろう。

また、ネットというプラットフォームに載ってしまったため、聴取者データがデジタルで聴けることになる。
アトリビューション(間接効果)で評価されるだろうか。
映像に比べると聴覚のみになる音声広告はインパクトが相対的になくなるので、直接効果は期待すべくもない。
ただ、ラジオ通販は返品が少ないという話も聞くので、このあたりにヒントがないだろうか。インフォマーシャルの方が相性が良い可能性もある。

と、今後に希望をつなげつつ。
そういえば、AM放送を止めて、FMに切り替える方向もあるね。

2019/12/02

テレビ広告はネット広告に削られている?

テレビキー局の四半期決算を見てみよう。

■日本テレビホールディングス株式会社

第2四半期IR決算説明会
http://www.ntvhd.co.jp/ir/library/presentation/booklet/pdf/20191112.pdf

日テレ単体 売上 1,512億 前年同期 -1.2%、営業利益 145億 前年同期 -8.7%。

放送収入をみると
放送収入 1,191億円 前年同期比 -4.4%
タイム 61,007億円 前年同期比 -2.1
スポット 58,053億円 前年同期比 -6.8
と、タイムもスポットも落ちているが、スポットで市場を保っていたところがあるので、視聴率が良かったといっても報われない結果である。
来期も下方修正。

資料の中にインターネット事業とかネット広告とかの数字はないようだ。
切り出すまでもない規模ということだろうか。
初期に提案した、タイムとネット広告をパッケージする方法は、一笑に付されたままか。権利関係も当時より改善されたはずだし、広告を掲載する方法も広告差し替えできる。
いっそのこと、インターネット・サイマル放送しちゃえばいいのに。

■東京放送ホールディングス

2020年3月期 第2四半期決算資料
https://ssl4.eir-parts.net/doc/9401/tdnet/1765468/00.pdf

TBS単体 売上 1,022億 前年同期 -3.3% 営業利益  11億 前年同期 -5.5。
放送収入 885億 前年同期 -2.7%
タイム 423億 前年同期 -3.1%
スポット 387億 前年同期 -2.6%
こちらも、来期は下方修正。(決算短信より)

こちらもネット広告売上は記載見つからず。
ただし、気になるのが決算短信にあった
国内番販や無料動画配信での広告収入を含むコンテンツ収入が52億2
千6百万円(同1.8%減)
減じてるのか・・・。

■フジ・メディア・ホールディングス

2020年3月期 第2四半期 決算説明会資料

フジテレビ単体 売上 1,276億 -2.4%、営業利益 49億 +7.4%。

タイムとスポットの取り扱い表記がことなるが、
放送収入 887億 前年同期比 -3.1%
ネットタイム 389億 前年同期比 -5.0%
ローカルタイム 5,9億 前年同期比 -10.4%
スポット 439億 前年同期比 -0.2%

昨年と比較して大型イベントがなかったそうで、前年を下回ったとのこと。( 2020年3月期 第2四半期決算短信 )
映画事業は好調なようで、やはりコンテンツ力次第。

■テレビ朝日ホールディングス

2020年3月期 第2四半期決算 決算説明会資料
テレビ事業の売上 116億円 前年同期比 -4.9%
 第2四半期タイム収入合計は 208億円 前年同期比 -4.2%。
 第2四半期スポット収入は206億円 前年同期比 -8.1% 。
インターネットの部分ではAbemaTVがあるので、内容は見るべきところがある。
売上94億円 前年同期比11.8%の成長。だが、事業前提の落ち込みをカバーするには至らなかった。
テレビ番組の制作費は、もともとインターネットのようなコンテンツがタダである世界だと、課金回収が難しい。また、広告も単価が安いので、どう頑張っても同じ費用の掛け方はできない。マルチユースによる収入多様性確保と派生コンテンツによる収益創出が欠かせない。
違う言い方をすると、インターネットでテレビと同じリーチを確保しても、広告事業収入では成り立たないよ・・・ということだ。
また、マルチユースにも工夫が必要だ。どのプラットフォームからも番組が見られるだけでは、ユーザはお金を払わない。
だから、プラットフォームごとに「ベネフィット」を用意する必要がある。
そのベネフィットは、制作時点で織り込まれていないとコスト高になるので、一粒で何度もおいしい制作をしないと難しいだろう。
地上波、BS/CS、インターネット、ビデオ(DVD/BD)と多岐に亘るけどね。

■テレビ東京ホールディングス

2020年3月期 第2四半期決算説明会資料

地上波 売上552億円 前年同期比 -1.7%、営業利益 14億円 前年同期比 -29.9%。
タイム売上 240億円 前年同期比 -4.0%
スポット売上 126億円 前年同期比 -10.8%
数字は悪いが、アニメやネットでの収益についてはページが割かれている。
また、データオリエンテッドな話もあったりして、独自路線のテレ東である。
色合いとしてネットに近い制作と番組構成だと思っている(キー局の中では、でしかないが)ので、経済ニュースとアニメとテレビ然としない雰囲気の番組で攻めて行って貰いたい。

以上で、キー局を見てみたわけだが、地上波というかテレビ事業は下り坂。
歯止めがかかる希望もなく、下方修正というオリンピックの前に沈んだ感じになってしまったが、東京オリンピックという世界の祭典が2020年に予定されているだけ、まだ希望がある。
もちろん、その東京オリンピックが終われば、めぼしい材料がない。
5Gが始まる?いや、インフラの普及(新しい市場)って時間がかかるので、一年やそこらで変わるものじゃない。設備はあっても、端末普及やコンテンツ開発は数年かかる。
通信キャリアとテレビ局は、新インフラに取り組んで撤退したよね・・・。

そして、スマホ端末が10万円する現在、そんな簡単に機種変更はできない。
通信規格がハードウェアの部分で変わるのだから、4G端末より劇的に安いか、お得でなければユーザは動かないはずだ。
3G→4G、ガラケー→スマホ、移行期間は長いのだ。
いまだに、ガラケー使ってる人は3割くらい残っている。
ガラホに移行するとは思うけど、5Gは難しいんじゃないかな。

一方、スマートテレビは5Gと関係ないハード構成である。
テレビとBD/HDDプレイヤー、CATVにゲーム機と接続されるものは増えている。
どれもネット接続が内蔵されている。
もし、5Gが前評判通りなら、光ファイバーを宅内に引き込むより、5G端末を使った方が通信料が安くなれば、ラストワンマイルは激変すると思う。
この時、テレビはテレビでいられなくなる。
テレビ電波塔の維持を考えると、5Gに移行した方がテレビ局のコスト負担は軽くなる。
ラジオも同じだ。
ネットにインフラが統合されたら、内容でしか勝負はできなくなる。

蛇足。

放送と通信は違う、災害の多い日本だと放送による周知は生死を分ける、という話はある。
それは、現時点では、だ。
基地局の電力、通信の輻輳、端末のバッテリーは、技術が進めば解決されていく。
放送は1対n、通信は1対1であったが、放送と同じ視聴者数を捌けるようになる。

その時が来たら、メディアはどうなっているのだろうか。
いや、どうあるべきなのだろうか。

2019/11/26

政治と広告、ターゲティング制限

Facebookやtwitterが、

Googleも政治広告ポリシー変更 ターゲティングの制限強化やディープフェイク禁止など
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1911/21/news066.html

ということで、虚偽内容を含んだ広告を禁止するとともに、制限するというのだ。
今まで許されていた(事後確認というのも理由にならない)、というのも許せないが、ネット広告が不愉快な存在になっているのは配信の方法や表現だけが問題ではなく、その内容や在り方といった、滲み出る「濃い」グレーな倫理観のオーラである。

政治と広告は、プロバカンダという言葉に代表されると思う。
公職選挙法で規制されているのは、あくまで選挙だけである。
政治、信条、宗教などは広告で扱わないと決められていれば、ある程度は抑止できるのかもしれないが、広告審査では掲載拒否を見越して手を打ってくるので、厄介なものでもある。おそらく、マスメディア系の広告審査経験者がいないネット媒体社やメディアレップは、気にしたことがない人も多いだろう。
法律で禁止されていない限りは、媒体社の裁量範囲であるとはいえ、一般には公開されないことの一つなので、業界団体の会員にでもなって会合に参加して知見を広めることをお勧めする。

掲載基準は自社の利益のためにあるのではなく、ユーザの利益のためになければ意味がない。だから、営業とは闘わなきゃならないんだよね。
※ユーザの利益を守ることで、ユーザの信頼を得る。それが、結果的に最大の財産となる。

2019/11/21

Yahoo!とLINEの経営統合は広告媒体力を削がれるだけではないのか

ども、単なる業界ウォッチャーとして国内の広告媒体市場縮小を危惧している波乗りペンギンです。

令和元年こと2019年、11月に強者統合というニュースが出て、次の週には統合の基本合意が発表され、2020年に統合するようです。

ヤフーとLINE、経営統合へ 記者会見の一問一答まとめ
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1911/18/news102.html

興味深かった発言を引用すると
川邊 他社とは、オールジャパンということで、さまざまな協業を呼び掛けたい。
これは、買収とか吸収合併とかも続きそうだなと、また、独占禁止法とか審査を受ける前なので、具体的なことは「統合を果たした後に考える。」という回答が多い。

で、広告媒体としての二社の統合については、あんまり触れられていない。
ザックリ、検索連動型というか運用型広告はグーグルが市場の8割以上を占めていると考えている。運用型広告が規模拡大(電通 日本の広告費 参照)を続ける中で、盛り返すのは難しい。成長が止まったかのように、売り上げも前年度並みである。
ユーザは検索からSNSによる情報探索にシフトしているという流れもある。

LINEの方は、2019年第三四半期の説明資料のP8を見ると、広告事業全体では伸び悩んでいる。同資料の利益 P14-P17を見ると、赤字。
不採算事業だけでなく人員も含めたコストカットを考える段階で、一部の識者が指摘してたが、最も使われているメッセージ(チャット)機能で収益化できていないのが、ネックだろう。とはいえ、広告を流し過ぎたら、ユーザの一斉離反は目に見えてる。

さて、Yahooは利用者の年齢が高く、LINEは若いので、相互補完できるという話があるが、利用者数が増えるのは見かけだけです。
スマホのユニークユーザで考えれば、両方を使っているユーザ、つまり重複は大きいはずです。
日本の人口は1.2億ですが、スマホのネット人口は8千万人くらい(情報通信白書 モバイル端末の保有状況(個人))でしょう。ガラケー利用者がネットをスマホ並みに利用している、という楽観的な見方はビジネスで持ち込むのは勧められない。民間調査だと、7千万人の利用という推計もある。
まして、アプリのシェアと利用頻度を民間のデータで算出してくと、もっと少ないと見た方がいいでしょう。登録者数とか幽霊会員も若干(!?)いるので、媒体的に意味のあるターゲットを考えると厳しいところがある。
統合するとなると配信システム、個人情報の許諾し直し、時間と手間とお金がかかる。
日本版GDRPとか、あるしね。

GAFAに対して対抗していくという報道機関の見方が多い気がするけど、ネット広告会社はGAFA媒体にズリズリ引っ張られてしまった後だ。
売上が多くの部分を占めてしまっている以上、運用型広告がアドフラウドで規制が掛かって売れなくならない限り、他の広告商品を売るということはない。
ブランド(ブランドを毀損する広告を掲載しない)とか言い始めているが、GAFAだって対応してくる。
怖いのは、新しい商材を開発して、日本市場にも投入してくる。
その研究開発や投資額は、物量戦でかなわない。

そして、アジアに希望を見出そうとしているが、中国はBATと政府がブロックしている。
ましてや軍事侵攻(南シナ海)だけでなく経済も東南アジアに侵攻している。
インドネシアに新幹線導入でひっくり返されたが、フェアには戦えないと思った方がいい。

しかも、少子高齢化がある。
高齢化の問題は長寿化による介護と医療費が重い。
団塊の世代が天寿を全うすれば、経済的にも国家予算的にも余裕が出るけど、それまでに発生するだろう個人の負担は計り知れない。
一人っ子で未婚だと両親の介護は、働きながらだと心身ともにやられる。
少なくない数がいるのは、晩婚での高齢出産で、幼子と親の介護というダブルの負担である。30年前では、20代で結婚して50代で子供が独立して、60歳定年なので早期退職で介護も対応可能だったろうが、今は違うのだ。※
お金で解決できるならいいのだが、そもそも施設や病院に空きがなかったり、数千万円の入居費用の工面が必要なわけで、国が二千万円用意しろというのは嘘でも何ともない。
現実問題、都心から離れた小さな家が一軒買える金額である。
仮に持ち家の売却という手段が取れたとしても、売れなきゃ意味がないし、お金ができても施設に入れなければ家なしである。
その手続きとか、親が倒れたら子供が代理人として駆け回るのだ。
生産性が落ちるとかいう問題じゃなくて、休職するしかない人も出てくるだろう。
99%が中小企業であり、福利厚生は大企業並みに手厚いところは少ない。
介護の働き手が足りてない、施設が空かない、この状況では家族が在宅介護で仕事をセーブするしかない(収入は減る)未来が見えているだろうか。

※親が30歳で出産、子供は40歳で孫を出産する時の親は70歳。
 親が健康で92歳まで生きれば、孫は大学を卒業し子供は62歳となるが、定年は65歳。
 子供が現役で働いて子育て中のうちに、親は平均寿命を迎える計算になる。
 なお、人口動態調査で平均的な数字が見られるが、ここでは今後増えるだろう事態を提示した。
 ちなみに、身近に増えてきたからであって、都市圏に住む者の感想ベース。

広告媒体がリーチできる生活者は、マスメディアだとテレビを除き減ってきている。
代わりに、ネット媒体(スマホ)によるリーチが躍進しているが、加齢による視覚や聴覚の低下はマスメディア接触を減じる方向に働く。
テレビは大型化と高精細化による恩恵があるが、持ち運びが必要な新聞や雑誌は物理的に大きくできない。また、免許返納(車の中でラジオを聴く)でラジオ接触も低下。
現実問題、老眼が進行した自分自身を振り返ると、新聞記事は見ない。拡大できないし。
雑誌も買わなくなったし、コミックも読まなくなった。目が疲れるんだよね。

では、若い世代から働き盛りは、スマホに全振りになるかというと、使われているアプリが固定化されている状況だ。
仮にマスメディアの視聴読者がスマホにシフトしたとしても、インストールされた後に使われ続けるアプリは一つか二つである。
これは、PCのポータル争奪戦の時に、ブラウザのスタートページになれるかどうかというのが、基準になったこともあったが、スマホでも似たようなことになっている。
サービスで先行企業を追い落とすか(ポータルで勝者になったYanooo!をロボット検索でgoogleが追い落とした)、新しいカテゴリーを作るか(SNSだとtwitterやFacebook、トークアプリLINE)、生き残るための選択肢は多くない。
広告媒体としては、リーチとコンバージョンで測られる以上、リーチが大きければ優位になる。その意味では、国内で最大リーチを取り方が重要になる。

課題は、グーグルがandroid端末を握っているので、マイクロソフトやアップルと同じように、有利になっているところだろう。
ヤフーは移動体キャリアとして、親のソフトバンクがあっても、意図的に自社グループの商品だけを通信料無料にするとか、優位にできる要素が免許事業なので制限されている。
ガラケー時代のように、Y!ボタンを付けられれば良かったんだけど、物理的なスイッチはスマホの登場で無くなってしまったからね。

■蛇足、この後も厳しい

で、広告媒体としてのリーチが伸びない以上、SNSやECなどの領域に出ていかなければならなかったY!Jは、ディレクトリー型検索をgoogleの検索エンジンを使って、ロボット型に移行したために、運用型広告では国内でも勝つ見込みはゼロになった。
SNSもあった( eグループ買収して作ってたのよ)んだけどクローズした後だ。
ECを狙ったけど、ここがレッドオーシャンで楽天、アマゾン、メルカリ、メーカーショップ、販社ショップ・・・、勝ち筋が見えない。

個人的には、Y!ニュースがネットでは利用比率が高かったので、ここを攻めればと思っていたのだが、その矢先にスマートニュースやグノシーが出てきてガッツリ新ジャンルを作られてしまった。
不思議なもので、打ち手が狂うとハマる。
料理動画も伸び悩んで、欧米の動画サイト(ネットフリックスとか)進出に伴ってYoutubeが終わると言われながら終わらないどころかユーチューバーが出てきたり、tiktokで隙間を埋められたり、動画市場も手が届かなくなったんじゃないかな。

そうやって見ていくと、実はLINEも多角化したけど、もう一つ伸びがない。
決裁事業で金は使ってしまった。
あ、ヤフーもおんなじだよね~という話になったかどうかは知らないが、ユーザ基盤を拡大したうえで整理統合を図っていくという話だと、希望も持たせられそうだ。
ただし、シナジーが生まれるとしたら、数年後だ。今仕込んでいるAI系があれば、
記者会見プレゼンテーション資料PDF(6 MB) 
ユーザ数が増えたことによる新ジャンルのサービスがヒットする夢も描け、復活も可能というストーリーも作れる。もともと、告知に関しては自社の媒体が使えるので、初期投資は開発費だけで行ける。
媒体社ならではの最大メリットでもある。
裏返すと、他社サービスに流れる前に自社サービスに置換してしまわないと、ジリ貧である。いや、流れてしまったユーザは、流れた先の会社を買収して、引き戻してしまえばいいのだ。動けるうちに。

以上

2019/10/31

ネットを含む広告会社系の半期、四半期決算

四半期・年度決算とか始まりました。


■サイバーエージェント 2019年年度 決算説明会資料(2018年10月~2019年9月)

売上高: 4,536億円 前年比8.1%、営業利益: 308億円 前年比2.2%と、増収増益。
純利益は、17億 前年比 -65.1%ということで、利益はしっかりと残してきている。

AbemaTVが、下降傾向にあるネット広告やモバイルゲームをカバーする存在になるのか、今のところ分からない。
会見では、テレビのやらない会見最後まで生中継とかで方向性が出てきている。
ただ、テレビがやらない・・・ほかの動画サービスとの棲み分けが課題だろう。
独自コンテンツはヒットすれば強いが、それはテレビも動画サービスも土俵は同じである。

来年のオリンピック、5Gサービス開始、個人情報の規制強化(クッキーと位置情報)など、追い風になるのか逆風になるのかわからないが、AbemaTVの分岐点になりそう。

■セプテーニ 2019年 第4四半期(通期)決算説明会資料

売上:765億円 前年比 5.6%、営業利益:1.8億円 前年比 -81.3% 増収減益。
四半期が回復したことで、良かった感じか。
20Pにあるように、電通の影響力で立て直したんだが、あくまで補強的な感じなので、このまま長くは続かないはず。
そのまま依存して100%を狙うという手もあるが、そこは経営判断になろう。

運用型広告の下請けに特化されないよう、グループ内での位置取りが肝要かと。


■博報堂DYホールディングス 2020年 3月期 上期連結決算概要

売上高:6,828億円 前年同期比+2.9%、営業利益:202億円、同-134億円、-39.9%。
メルカリの株売却益の反動があるので、それを除けば悪くないそうだ。
インターネットメディア の構成比が昨対比で 19.4%から 21.0%と、2割越えになって売り上げの伸長に貢献したようだ。
ただ、人件費はデジタル系人員の確保や環境整備にコストをかけているようで、今後とも費用は掛かることが予測される。
また、海外の売り上げは買収(M&A)により積みあがっているので、不透明感がある。
一口に海外といっても、「アメリカ、 カナダ、 ドイツ、 イギリス、 フランス、 オランダ、 ロシア、 中国、 台湾、 韓国、 タイ、 マレーシア、 シンガポール、 ベトナム、 インド、 オーストラリア」がある(P13)ようだし。

■カルタホールディングス 2019年12月期 第4四半期決算説明資料

売上高 2019年7-9月 51億、営業利益 3.9億。
統合しちゃったので、過去の比較も意味なし。人件費をメインに販管費も削れているが、来期以降にならんとわからない。(DAC比較すれば、cciは力を失ってしまった気がする)
この統合により、電通デジタルとセプテーニの市場領域には被りませんよ、という内容が再掲(中計 P45)されているが、運用型広告はもっと攻めなきゃまずい気がする。
ブランド広告とか簡単に言うけど、ばらまくだけの広告掲載に比較したらマシな程度のインターネット広告だから、広告主が満足まで時間はかかると思うんだ。

■電通 2019年度 第3四半期 連結決算概況

単体 売上高 2019年7-9月 3445億円 前年同期比 -5.0%、営業利益 70億円 前年同期比 -45.8%。
売上も利益も減ったのだが、連結でみると桁が違うのだ。
連結 売上高 2019年7-9月 1兆1864億円 前年同期比 -5.0%、営業利益 189.7億円 前年同期比 8.7%。
エリア別でみると(P5)、アジアが前年比の売り上げで-12%と、急降下。
中国vsアメリカの貿易戦争の余波だろう。
国内事業の媒体別(P24)だと、ネットと販促が伸びている。というか、雑誌の前年対比が劇落ちのまんまだ。
「マスメディアに含まれるインターネット*2 」がどう配分されるかは別として、足りないよね・・・。

※持ち株会社移行の体制が発表こちらのリリースを見る限り、特にデジタルを意識したものではないとも見える。

■オプトホールディングス 2019年12月期第3四半期決算説明会資料

売上 209億円 前期比 4.5%、営業利益 -4.2億円。
既存予算縮小、増員で販管費が抑えきれず、新規も伸びそうにないよね・・・と感じる内容(P5)。
人員の強化、人材投資は止めたら負け的な部分はある。
今後の部分では、AI事業とか地方(ソールドアウト)がありそうだが、AIに関しては事業として成立する(売上がたち利益が出る)のは先ではないかということと、豪雨災害で地方に影響があることを考えると、我慢の時のような気がする。
さらに、YahooとLINEが統合したら、マイナスに働くんじゃないかな。
商品減るでしょ・・・。

■アドウェイズ 2020年3月期 第2四半期決算説明会

博報堂dymp資本を6.82%入れたということで、金額にすると962,014,200 円が調達されたそうだ。足りるの?
売上高 89億9千7百万 前年比-18.5%、営業利益   1百万円 前年比 -97.0% 。
スマホのアプリ広告が減速、海外も振るわず、経常利益はプラスにしたものの、下方修正を見通すことに。
運用型広告は中小企業の景気動向に影響を受けやすいので、日本経済が思わしくないことを反映しているのかもしれない。一方、ナショナルクライアントはマス広告予算をネットに振り替えるという流れがあるので、マスメディアの扱いを持つ広告会社はマイルドな影響(比較的であって、金額規模からいうとすごいけどな)になる。

今回のHDYMPの資本を入れて、改善されるとしたら売り上げが回されるだろうことだが、HDY系の売上比率が高くなれば、次の段階に進むのかもしれない。


以下、随時追加



2019/10/01

特定サービス産業動態統計調査 201907速報

国の統計が間違っていたというニュースが続き、良い数字は信じて、悪い数字は信用しないという、占いっぽい扱いにならないことを祈るばかりです。

さて、どうも周囲から景気が良い話が聞こえない。
電通も博報堂も減益です。
中小企業となるプロダクションは、もっと前から影響が出ています。(体感)
まぁ、虚業だから中身スッカスカです。ネットは手に触れるものがないので、もはや蜃気楼でしょう。

さて、情緒的な話はここまで。

https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20190910-00141904/

これを見とけば、モヤモヤ感は早めに解消できたのに。
元となる経産省の統計は

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tokusabido/index.html

媒体別の数字をダウンロードできるので、業界関係者で経営企画とか役員の人は、もう見ていることだろう。
ただ、数字だけなので、大手の人じゃないと使い方が難しいと思います。
各媒体の置かれている背景と状況を知らないと、解釈ができないはずです。

新聞が盛り返している・・・という数字ですが、部数が落ちているのに?
ネット広告も伸び率が落ち始めているが、海外に流れている数字は入ってる?
という疑問はありますが、推移が大事。
市場全体は縮小している。
もしかしたら、マス媒体は日本経済の低迷で売り上げを減らし、ネット広告が中小零細の販促費を広告市場に引き込むことで、底上げしてたりするかも知りない。

動態統計調査