ども、単なる業界ウォッチャーとして国内の広告媒体市場縮小を危惧している波乗りペンギンです。
令和元年こと2019年、11月に強者統合というニュースが出て、次の週には統合の基本合意が発表され、2020年に統合するようです。
ヤフーとLINE、経営統合へ 記者会見の一問一答まとめ
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1911/18/news102.html
興味深かった発言を引用すると
川邊 他社とは、オールジャパンということで、さまざまな協業を呼び掛けたい。
これは、買収とか吸収合併とかも続きそうだなと、また、独占禁止法とか審査を受ける前なので、具体的なことは「統合を果たした後に考える。」という回答が多い。
で、広告媒体としての二社の統合については、あんまり触れられていない。
ザックリ、検索連動型というか運用型広告はグーグルが市場の8割以上を占めていると考えている。運用型広告が規模拡大(電通 日本の広告費 参照)を続ける中で、盛り返すのは難しい。成長が止まったかのように、
売り上げも前年度並みである。
ユーザは検索からSNSによる情報探索にシフトしているという流れもある。
LINEの方は、
2019年第三四半期の説明資料のP8を見ると、広告事業全体では伸び悩んでいる。同資料の利益 P14-P17を見ると、赤字。
不採算事業だけでなく人員も含めたコストカットを考える段階で、一部の識者が指摘してたが、最も使われているメッセージ(チャット)機能で収益化できていないのが、ネックだろう。とはいえ、広告を流し過ぎたら、ユーザの一斉離反は目に見えてる。
さて、Yahooは利用者の年齢が高く、LINEは若いので、相互補完できるという話があるが、利用者数が増えるのは見かけだけです。
スマホのユニークユーザで考えれば、両方を使っているユーザ、つまり重複は大きいはずです。
日本の人口は1.2億ですが、スマホのネット人口は8千万人くらい(
情報通信白書 モバイル端末の保有状況(個人))でしょう。ガラケー利用者がネットをスマホ並みに利用している、という楽観的な見方はビジネスで持ち込むのは勧められない。
民間調査だと、7千万人の利用という推計もある。
まして、アプリのシェアと利用頻度を民間のデータで算出してくと、もっと少ないと見た方がいいでしょう。登録者数とか幽霊会員も若干(!?)いるので、媒体的に意味のあるターゲットを考えると厳しいところがある。
統合するとなると配信システム、個人情報の許諾し直し、時間と手間とお金がかかる。
日本版GDRPとか、あるしね。
GAFAに対して対抗していくという報道機関の見方が多い気がするけど、ネット広告会社はGAFA媒体にズリズリ引っ張られてしまった後だ。
売上が多くの部分を占めてしまっている以上、運用型広告がアドフラウドで規制が掛かって売れなくならない限り、他の広告商品を売るということはない。
ブランド(ブランドを毀損する広告を掲載しない)とか言い始めているが、GAFAだって対応してくる。
怖いのは、新しい商材を開発して、日本市場にも投入してくる。
その研究開発や投資額は、物量戦でかなわない。
そして、アジアに希望を見出そうとしているが、中国はBATと政府がブロックしている。
ましてや軍事侵攻(南シナ海)だけでなく経済も東南アジアに侵攻している。
インドネシアに新幹線導入でひっくり返されたが、
フェアには戦えないと思った方がいい。
しかも、少子高齢化がある。
高齢化の問題は長寿化による介護と医療費が重い。
団塊の世代が天寿を全うすれば、経済的にも国家予算的にも余裕が出るけど、それまでに発生するだろう個人の負担は計り知れない。
一人っ子で未婚だと両親の介護は、働きながらだと心身ともにやられる。
少なくない数がいるのは、晩婚での高齢出産で、幼子と親の介護というダブルの負担である。30年前では、20代で結婚して50代で子供が独立して、60歳定年なので早期退職で介護も対応可能だったろうが、今は違うのだ。※
お金で解決できるならいいのだが、そもそも施設や病院に空きがなかったり、数千万円の入居費用の工面が必要なわけで、国が二千万円用意しろというのは嘘でも何ともない。
現実問題、都心から離れた小さな家が一軒買える金額である。
仮に持ち家の売却という手段が取れたとしても、売れなきゃ意味がないし、お金ができても施設に入れなければ家なしである。
その手続きとか、親が倒れたら子供が代理人として駆け回るのだ。
生産性が落ちるとかいう問題じゃなくて、休職するしかない人も出てくるだろう。
99%が中小企業であり、福利厚生は大企業並みに手厚いところは少ない。
介護の働き手が足りてない、施設が空かない、この状況では家族が在宅介護で仕事をセーブするしかない(収入は減る)未来が見えているだろうか。
※親が30歳で出産、子供は40歳で孫を出産する時の親は70歳。
親が健康で92歳まで生きれば、孫は大学を卒業し子供は62歳となるが、定年は65歳。
子供が現役で働いて子育て中のうちに、親は平均寿命を迎える計算になる。
なお、人口動態調査で平均的な数字が見られるが、ここでは今後増えるだろう事態を提示した。
ちなみに、身近に増えてきたからであって、都市圏に住む者の感想ベース。
広告媒体がリーチできる生活者は、マスメディアだとテレビを除き減ってきている。
代わりに、ネット媒体(スマホ)によるリーチが躍進しているが、加齢による視覚や聴覚の低下はマスメディア接触を減じる方向に働く。
テレビは大型化と高精細化による恩恵があるが、持ち運びが必要な新聞や雑誌は物理的に大きくできない。また、免許返納(車の中でラジオを聴く)でラジオ接触も低下。
現実問題、老眼が進行した自分自身を振り返ると、新聞記事は見ない。拡大できないし。
雑誌も買わなくなったし、コミックも読まなくなった。目が疲れるんだよね。
では、若い世代から働き盛りは、スマホに全振りになるかというと、
使われているアプリが固定化されている状況だ。
仮にマスメディアの視聴読者がスマホにシフトしたとしても、インストールされた後に使われ続けるアプリは一つか二つである。
これは、PCのポータル争奪戦の時に、ブラウザのスタートページになれるかどうかというのが、基準になったこともあったが、スマホでも似たようなことになっている。
サービスで先行企業を追い落とすか(ポータルで勝者になったYanooo!をロボット検索でgoogleが追い落とした)、新しいカテゴリーを作るか(SNSだとtwitterやFacebook、トークアプリLINE)、生き残るための選択肢は多くない。
広告媒体としては、リーチとコンバージョンで測られる以上、リーチが大きければ優位になる。その意味では、国内で最大リーチを取り方が重要になる。
課題は、グーグルがandroid端末を握っているので、マイクロソフトやアップルと同じように、有利になっているところだろう。
ヤフーは移動体キャリアとして、親のソフトバンクがあっても、意図的に自社グループの商品だけを通信料無料にするとか、優位にできる要素が免許事業なので制限されている。
ガラケー時代のように、Y!ボタンを付けられれば良かったんだけど、物理的なスイッチはスマホの登場で無くなってしまったからね。
■蛇足、この後も厳しい
で、広告媒体としてのリーチが伸びない以上、SNSやECなどの領域に出ていかなければならなかったY!Jは、ディレクトリー型検索をgoogleの検索エンジンを使って、ロボット型に移行したために、運用型広告では国内でも勝つ見込みはゼロになった。
SNSもあった( eグループ買収して作ってたのよ)んだけどクローズした後だ。
ECを狙ったけど、ここがレッドオーシャンで楽天、アマゾン、メルカリ、メーカーショップ、販社ショップ・・・、勝ち筋が見えない。
個人的には、Y!ニュースがネットでは利用比率が高かったので、ここを攻めればと思っていたのだが、その矢先にスマートニュースやグノシーが出てきてガッツリ新ジャンルを作られてしまった。
不思議なもので、打ち手が狂うとハマる。
料理動画も伸び悩んで、欧米の動画サイト(ネットフリックスとか)進出に伴ってYoutubeが終わると言われながら終わらないどころかユーチューバーが出てきたり、tiktokで隙間を埋められたり、動画市場も手が届かなくなったんじゃないかな。
そうやって見ていくと、実はLINEも多角化したけど、もう一つ伸びがない。
決裁事業で金は使ってしまった。
あ、ヤフーもおんなじだよね~という話になったかどうかは知らないが、ユーザ基盤を拡大したうえで整理統合を図っていくという話だと、希望も持たせられそうだ。
ただし、シナジーが生まれるとしたら、数年後だ。今仕込んでいるAI系があれば、
記者会見プレゼンテーション資料PDF(6 MB)
ユーザ数が増えたことによる新ジャンルのサービスがヒットする夢も描け、復活も可能というストーリーも作れる。もともと、告知に関しては自社の媒体が使えるので、初期投資は開発費だけで行ける。
媒体社ならではの最大メリットでもある。
裏返すと、他社サービスに流れる前に自社サービスに置換してしまわないと、ジリ貧である。いや、流れてしまったユーザは、流れた先の会社を買収して、引き戻してしまえばいいのだ。動けるうちに。
以上