2017/11/17

アドフラウド、ビューアビリティ、ブランドセーフティ

初稿を送信して、ひと段落ついた。
2017年を振り返って、記事の数に関係なくトピックを挙げたところ、キーワードはタイトルの通り。

〇国家単位の規制では塞げない穴

広告業界的には、公正であれば市場として健全でいられるという良い話。
でも、広告を悪用する、されてしまう隙を塞ぐって事も対応しなきゃいけない。
日本だけで対策しても海外はルール無用だと、経済的に潰されてしまう。
法的な対応を求める声も多いが、結果としては最悪の選択になるだろう。

今回は、IABのイベントでP&Gの偉い人が、「アドフラウド」けしからん!といったこともあって、助かった一年である。
昨年から、米国では大統領選に絡んで「フェイクニュース」問題と「人種差別ターゲティング」可能な広告設定が出ていた。
これに、そんな問題あるサイトを広告媒体として経済活動を成立させているSNSに、広告掲載はしないというグローバル企業がたくさん名乗りを上げて、日本側も「アドベリフィケーション」機能を広告配信プラットフォームに追加する動きが加速した感がある。
IAB日本支部となったJIAAの活動も実を結んだ。

やっぱり、広告主の影響力が頼り。

〇アドベリフィケーション!?

まだ用語として定着していないようだが、広告がちゃんと掲載されていることを検証できる機能らしい。これによって、透明性が確保できるということ。
どんな場所に掲載されたのか、まずいのは排除するための機能だ。

最初から安心できる媒体だけに絞ったのがPMP(プライベート・マーケット・プレイス)だから、身も蓋もない言い方をすると、最初からちゃんとしとけよ!ってことになる。

まぁ、結果だけしか必要ないよね~というプロセス軽視が、インターネット広告の流れであったわけで、二十年以上も業界を見ていると「ようやく、ここまで来たか」という感慨深いものがある。

一方で、急激に成長したネット広告業界では、十分な教育や勉強の機会はなかったわけで、特に倫理観に関しては欠如していると思ってもいいだろう。
もちろん、倫理重視だと「隙間をついた」ネットビジネスは出来なくなるので、「やっちゃえ!」という展開になるし、そこに資金と人が集まるという投資側の倫理問題も大きい。(キャピタルゲインを得るために、圧力をかけるという話もよく聞く)

〇ユーザーとして素直に考えよう

二十年近く、広告の掲載に関しては「制限を設ける」ことを発信している。
別の公的な場所でガイドライン化した原案でもある。
どれも、理由があっての項目なのだが、この背景にある倫理観を共有していないと、文字面だけでは伝わっていかないのを実感している。

最近、米国IABもガイドラインを発表した。

ネット広告業界団体IAB、“容認できる広告”の指針「L.E.A.N. Ads」プログラム立ち上げ - ITmedia NEWS
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1510/16/news054.html

一人のユーザーとして、こんな広告の見せ方されたらウザいな、ということはやらないことだ。
「できることと、やっていいことは、別。」

結果的に、広告の掲載単価は下がり、掲載することで一定の反感を買い、本来得られたはずの成果を逃がしてしまっている。
大層なお金を使って・・・。
みんな薄々わかっていたはずだが、大きな問題になるまでスルーしていたわけだ。

成果だけということは、プロセスを見ないわけだから、掲載されようと見られまいと関係なくなってしまった事も要因だと思う。
しかし、ここで「よりよい掲載方法を考えよう」ではなくて、全部のサイトとページに掲載して量を拡大すればいいや、という方向になったのは知っての通りだ。
どんなにAIを使ってターゲティング精度を高めても、ウザい限りは誤差の範囲でしか数値も変わらないだろう。(1990年代後半は、バナー広告でも平均10%のCTAが得られていた。今は、0.02%とか・・・。)

〇コンテンツにあった広告、人を絞り込むだけ無駄

一人のユーザとして不愉快なんだが、四方をバナー広告が囲んでの間にテキスト広告というメディアサイトが多すぎる。
しかも、某企業の不祥事に絡んでサイト訪問したら、ずっと広告が着いてくるのだ。
ケンカ売られているとしか思えない。
絶対買わない。

違法コンテンツにナショナルブランドの動画広告が出ていた。
あまりに残念で、その飲料食品は家にあったのだが、廃棄してブランドスイッチした。
自分も加担しているような気になったからだ。

そう考えると掲載する媒体を合法的なものにして、広告をばらまいて、リターゲティングしたところで、ユーザーとの良い関係からしかブランドは構築できない
コンテクストがないからだ。
企業のマーケティング(カスタマージャーニーマップ)ではなくて、ユーザー側(インサイト)のね。

今でも笑えない話だが、
・車を買った後でも、車の広告が出てくる。
・ニュースで女性向けの商品を見た後、男性なのに広告が付いてくる。
てなことは続いている。
googleでは広告の右上にあるインフォメーションマークをクリックすると、「興味ない」「買ったよ」というレスができるのだが、そこまで面倒なことは続けられない。
広告を見るためにサイトを訪問したわけじゃないし、その労力をユーザーに強いるのはおかしい。

コンテンツただで見ているんだから、広告ぐらいで文句言うなよ、という広告業界関係者もいる。
でもね、広告の方が多いって、本末転倒だと思うんだけど・・・。


2017/11/16

電通vsDNP、どっちが納得できるコンセプトなの?

どこぞに寄稿をしないといけない時期になって、いろいろ考え始めた今日この頃。
二つの記事をご紹介。


https://markezine.jp/article/detail/27152

どちらも、デジタルシフトする企業に向けたコンセプトの説明であるが、印刷会社のDNPこと大日本印刷と世界最大の単体売り上げを誇る広告代理店の電通である。
両社の過去の関係は、取引相手であり競合でもあったりして、個人的には面白みを感じたのであるが、皆さんは両方を読んだうえで、どう思ったであろうか。

○広告主は何を求めているのか。

立ち位置が違う会社ではあるが、提供するサービスはマーケティングのはずだ。
だが、DNPは生活者の非デジタルも含んでいるのに対して、電通はデータによる生活者の把握になっていて、まったく違う方向になっていると感じたのだ。

そこで、ふと疑問に思ったのが、広告主はどちらを選択するのか?
という単純かつ素朴な事である。
普通に考えると、広告主の抱える課題によって選択は異なる、以上だろう。
しかし、アルコールの力を使って、別の仮説を立てようと思う。

電通は、信頼回復のために徹底したアカウンタビリティを求められた結果、データによる説明可能なコンセプトを宣言したのではないかということだ。
マスメディアとか把握できない生活者を許容する余地はなく、データで把握できる生活者をソースにしてマーケティングを実行するしかないのだ。
既存顧客対策といってもいいだろう。
おそらく、人が係る作業を削って、ミスを生まないようなシステムを構築すると、こうなるんじゃないかという理想的なコンセプトのはずだ。
もちろん、BIベンダーになるわけじゃないので、CR強化の新任顧問を迎えて抜かりはない。

一方、DNPは枷がないので語る内容も楽になっていると思える。(比較であって、セミナーの内容ではない)
印刷会社として優位な点も明確だし、現状の課題は同じ認識だ。
こちらは、既存顧客よりも新規だろう。

○赤潮発生中のネット市場

もはや説明不要だろう。
人材が足りないどころか、人が足りない。
労働時間の削減、効率化、事業の寿命は三年、経営環境は悪化している。
日本市場と言いながら、グローバル市場の影響は免れないのだ。
ネット広告市場の拡大は、日本ドメインの企業から売り上げを奪い取り続けている。
広告会社のIR資料を見ればわかるが、海外売り上げの比率を高めるか、広告以外の事業を伸ばさない限り、成長が見込めなくなっているのだ。

脱広告は自らの意志というより、追い出されている感が強い。
異業種からの参入もあるし、ネットには国境もない。
言葉の壁、文化の壁、潮だまりを見つけて生きていくしかないのだろうか。
このままではジリ貧なのだと危機感はあるが、基盤である日本市場で足元を掬われる希望の星(具体名は書かないけど)も後を絶たない。

この調子だと、外資系デジタルエージェンシー(アドビ、IBM、アクセンチュアなど)が台頭するんだろうなぁ・・・と、不安を強くするのであった。