2005/07/06

認知の限界

広告業界誌や専門書に出てくる「認知率」。
実はどんなに知られている社名やブランド名でも、100%はない。
また、認知率が90%を越えると、それ以上あげるのに大変な労力を必要とすることが体験的に知られている。

何故?

ネット系広告実務者の間でも、疑問に思った人は稀なはず。
でも、CTRだけで広告が売れ続けるほど甘いビジネス界じゃ、ござんせん。
早晩、行き詰ってインプレッション・・・認知の獲得へと話はシフトするわけでした。

よくよく発表資料をひっくり返すと、「知っている」「聞いたことがある」とか「見た」「見たことがある」というのを一括して、「認知されている」としてるのだけど、気が付いてる?

これは、インターネット広告業界で話題となった「波乗りペンギン」という匿名サイトについてのお尋ねです。
Q.あなたは「波乗りペンギン」という言葉を聞いた事がありますか?
A.聞いた事がある、聞いた気がする、聞いた事がない、分らない
Q。あなたは波乗りペンギンを見たことがありますか?
A.見た、見た気がする、見てない、分らない


いわゆる純粋想起ベースのリサーチですね。

Q.あなたは波乗りペンギンを知ってますか?
A.説明できる、理解している、知っている、ちょっと聞いた、知らない、分らない
Q。あなたは波乗りペンギンを見たことがありますか?
A.容姿を説明できる、目に焼きついている、見た、チラッと見た、見てない、分らない


はてはて、後半の設問は無茶苦茶です。
認知と理解と、ごたまぜじゃないっすか。

おまけに、人には忘却する機能がありまして、覚えていられないわけです。 しかも、回答のすべては主観的な個人の問題です。 人間の思考は機械に置き換えられない現状からすれば、 どんなにシミュレーションしたって脳内でのニューロン強化は見られませんし、 固定化できない問題です。

簡単に言うと、「私の思うリンゴ」と「あなたの思うリンゴ」は、同じリンゴでありながら、産地や色、甘酸っぱさ、瑞々しさが全然ずれてイメージされてしまいます。 これは、良し悪しの問題ではなくて、人間の多様性が持つ進化への鍵とも言えましょう。 この多様性の鍵は、必ず異なった文明に属するの敷物の上に置かれるわけです。 では、この鍵がカギとして利用してもらえるでしょうか。

かなりの努力が必要でしょうけど、錠前と一緒において、実演すると理解してもらいやすいでしょうね。
でも、鍵の掛け方開け方には、鍵が錠前を開ける道具であること認知しなければなりません。
穴に差し込む、回転する、錠前がロックされる。 と進められるわけですが、3歳児はやり方は覚えても、理解までには至りません。 よって、鍵を「鼻の穴」「コンセント」「FDDにいれる」など縦横無尽の行動に至るわけですね。

話を元に戻しましょうか。

鍵を知っているか? というのだと、受け手側に、解釈の幅がでるです。 ヒロシです・・・。
物体としての鍵の名称なのか、比喩的な意味での鍵なのか、扉を開けることを意味しているのか、コンテクストによっても異なるハズです。

でも、多様な解釈を許す質問をすると、

言葉を知っているのと、言葉の意味を知っているのでは、大きな違いですから、 選択肢が適切でなければ、人は最も近いものを選ぶです。 DTRだと、選ばないとエラーが出るです。これでは、誘導尋問と何が違うのか、調査と言えるのか疑問でしょう。

さらに、この調査を実施した直後にサンプルは変化してしまうのです。 プロシューマーと言われる調査ズレしている生活者の誕生です。

彼らは、一里先からでも企業のプロモーションを嗅ぎ分ける情報力を身に付けている。その場しのぎのキャンペーンで、商品が売れていないことを、サービスに人気のないことを、感じてしまうニュータイプなワケです。

米国ではYジェネレーションと言われてる、アレです。
日本だと2チャンネラーがモデルイメージかな。

0 件のコメント: